
ARTIST: Killer-Bong
TITLE: Brooklyn Dub
LABEL: Black Smoker Records
CATALOG No.: BSJ-011 [CD]
YEAR: 2014
01 destination of the kobushi
02 broken ATM
03 Egyptian Musk light
04 set up 2 chicken sandwich
05 Mr&Mrs T without Gin
06 shine in Tifanny Green
07 get on A train
08 in front of Eileen’s
09 a bridge drawn by Fude
10 Token with no holes
11 scent of jamaica
12 to Jay street
13 C line is
14 Brooklyn Dub
15 across the street
16 where the Express don’t stop
[REVIEW]
KILLER BONGの数あるソロ作品のなかでとくに人気があるのが、この「DUB」シリーズだ。『OSAKA DUB』(2005)にはじまり、『Tokyo Dub』(2006)、『Moscow Dub』(2006)の3枚、そしてフリージャズ・ドラマーの富樫雅彦の音源をミックスした『TOGASHI DUB MURDER SCENE』(2008)、ドイツのJAHTARIの音源をミックスした『LEIPZIG DUB』(2009)の計5枚がリリースされているが、とくに都市名DUBの最初の3枚は名盤との誉れ高く、いまだに人気が高い。
本作『Brooklyn Dub』は5年ぶり6枚目の「DUB」アルバムに当たる。「OSAKA」「Tokyo」「Moscow」に続く8年ぶり4枚目の都市名DUBの作品だ。KILLER BONGが何故本作の題名を「Brooklyn」としたのかはとんと不明であるが、彼にとっては思い入れのある都市名のひとつであることは間違いない。
KILLER BONGのファンは本作を聴いて、彼の最高傑作のひとつ、『Moscow Dub』を思い出すかもしれない。ヒップホップ、ジャズ、ダブ、ミュージック・コンクレート、アンビエント、エクスペリメンタルの叙情詩的なハイブリッドである。どの曲も甘美で、陶酔的であると同時に彼の野性味のあるリズムが打ち鳴らされている。とくに『Brooklyn Dub』は、今まで以上にメロディとリズムが際立っている。都会のメランコリアを切り刻んで、思いのままにコラージュする彼の滑らかな夜のジャズは、激しい衝動を内に秘めたビートと見事に融和する。やがて美しいピアノの音は煙のように消えていく……。『Brooklyn Dub』は、『Moscow Dub』に匹敵する傑作である。
僕にとって(あなたにとっても)、KILLER BONGは替えのきかないアーティストだ。彼にしか作れない音がある。『Brooklyn Dub』はファンにとって待望のアルバムだが、最近のクラブ・ジャズやコールド・テイストのテクノに関心のある若い世代にもぜひ聴いて欲しい1枚である。(野田努)